「日常生活活動を見る」




おはにちわ、のまりこです。

本日は、PTジャーナルからp228-p234の文献を紹介させていただきます。

理学療法ジャーナル 2020年 2月号 特集 薬と運動療法

日常生活活動としての歩行の捉え方

歩行は「ヒトの生活を支える基本的な行動様式」であり、2足歩行が人類にもたらした恩恵は計り知れません。歩行が不可能になることはQOLの低下に直結し、理学療法を実施するうえで主たる問題点や介入内容となることが多くあります。「移動動作はそれ自体が目的をもった行為ではなく、あくまでも他の目的を達成するために用いる移動手段です。例えば、対象者から聞かれる「歩けるようになりたい」の言葉の先には、”1人でトイレに行きたい”や“買い物に行きたい”、“歩けるようになって友人と旅行に行きたい”など他の目的となる動作が続いているということです。歩行は、動作と動作をつなげる手段としての役割をに担っています。歩行という移動手段を用いて何がしたいのか、どのような場所に行きたいのかまで捉えることが、日常生活活動としての歩行を考えるうえで最も重要な部分と言えます。

例えば、

自宅内でトイレに行く場面を想定します。動作を細分化すると、椅子から立ち上がり、トイレまで歩いて、扉を開け、方向転換をした後便座に座るといった一連の動作となります。この動作における歩行は、短い距離でも、扉の開閉など他の動作を行いながら立位姿勢を保ち、方向転換を行なって着座をする複合的な動きとなります。したがって、距離や速度を重視するのではなく、限られたスペースのなかで安全かつ安定して歩くための歩行能力について考える必要があります。

一方、

屋外での歩行は自宅内での環境と異なり、人や自転車・車などが往来するなかでの歩行、不整地での歩行となります。また道路を横断する場合は、信号機など限られた時間内に移動できる一定の速度が必要です。合わせて、外出先までの往復距離を移動するための耐久性も求められます。すなわち、屋外での歩行を考える場合には、歩行の安定性だけでなく歩行速度や耐久性など、より高いレベルでの歩行能力が必要になり、屋内外と活動範囲の違いにうより求められる歩行能力が異なることがわかります。

図1に日常生活活動と活動範囲の関係を示します。日常生活活動には、基本的活動である起居・移動、セルフケア(食事・整容・更衣・トイレ・入浴)に加え、炊事・洗濯・掃除・買い物などの応用動作を加えた生活関連活動では買い物など屋外への外出を伴う動作が含まれるため、対象者の活動範囲が広がっていくことがわかります。すなわち、対象者がどの活動はにで歩行を行うのか、移動した先の動作がどのようなものであるかによって求められる歩行能力は異なり、それぞれの場面に応じた評価や介入が必要になると言えます。

歩行の実用性

歩行の基本的な評価方法には、10m歩行テストや6分間歩行テスト、Timed Up and Go Test(T U G)などが挙げられ、効果判定の指標としても多く用いられています。これらの評価は、速度や耐久性、バランスなどの側面から歩行を捉えた評価であり、歩行能力すべてを評価しているものではないことを十分に理解して進めていく必要があります。

例えば、

間欠性跛行がみられる症例では、早く歩くことはできても、長距離歩行で痺れや痛みなどの症状が出現し歩行困難になってしまうなど、実際の清潔場面では実用的な歩行ができないことがあります。また基本的な歩行評価は問題ない場合でも、認知機能の影響から転倒のリスクが高く、歩けるのに実用性がない場合もあります。義足使用者においても、義足を履いてしまえば歩行は行えるにもかかわらず、義足の装着に介助を要し結果的に日常生活活動のなかでも歩行が自立しない症例もいます。一方、杖や独歩では歩行が不安定で、長く歩けない症例であっても自宅内の環境をうまく活用し、伝い歩きで自宅内の歩行が自立されている方も多く見受けられます。すなわち、“歩ける=歩行が使える”、“歩けるようになった=歩行を使えるようになった”ということではなく、歩行の評価とは別に、実際の生活で実用的であるかについて考えていく必要があるのです。

動作の実用性は、

①安全性、②安定性・確実性、③遂行時間、④耐久性、⑤社会に容認される方法・仕上がり度の要素によって判断するとされています。臨床でよく持ちいられる基本的な歩行の評価は前述した実用性を構成する要素のどの部分について評価しているのか、評価項目ごとにみていきましょう。

1.各評価バッテリーは実用性の何を評価しているのか
1)10m歩行テスト

10m歩行テストは、歩行の安全性について速度の側面から評価する指標です。快適速度および最大速度の所要時間と歩数を計測し、動作の遂行時間を評価します。屋外歩行を想定した場合、横断歩道を渡るには1m /秒の速さが必要であるとされ、屋外歩行の可否を判断する1つの基準として臨床場面で活用されています。また、Perryらは、歩行速度によって脳卒中片麻痺者における日常生活の自立度に差が出ると報告しており、0.4m /秒未満は屋内移動のみ、0.4〜0.8m /秒は屋外での限られた移動は可能。0.8秒より早ければ屋外歩行自立と分類しています。また、高齢者において0.7m /秒未満の歩行速度が転倒と関連するとされています。

2)Timed Up and Go Test(TUG)

TUGは歩行の安全性について、遂行時間や動的バランス能力の側面から評価する指標です。椅子から立ち上がり、3m先の目印のところで方向転換し、元の椅子に座るまでの動作の遂行時間を評価します。そのため、直線的な歩行だけでなく、立ち上がり・回転、着座動作を加味した動的バランス能力を評価できることが利点と言えます。TUGは転倒リスクの予測に多く用いられ、13.5秒以上で転倒リスクが高まるとされています。また、須藤らは、脳卒中片麻痺患者の院内実用歩行達成の目安として、カットオフ値は20秒、屋外実用歩行については17秒という値を報告しており、移動能力を予測する指標として用いられます。

3)Berg Balance Scale(BBS)

BBSは歩行の安全性について静的・動的バランス機能の側面から評価する指標です。立位保持や座位保持などの静的バランスと360°回転動作や段差症候などの動的バランスについての評価することができます。BBSでは得点での評価に重きが起これることが多いですが、どのような場面でバランスを崩しやすいのかという視点で、下位項目ごとに評価時の反応も合わせて記載し評価を行えると良いでしょう。BBSは、方向転換や床のものを拾い上げるなど、基本的活動のなかでよくみられる動作でのバランス評価も行うため、自宅内での歩行を捉える際の一助となります。BBSが45点以下で転倒リスクが高まるとされています。

4)Physiological Cost Index(PCI)・6分間歩行

歩行時のエネルギー効率や運動耐用能についてかにに評価する方法として、PCIおよび6分間歩行テストが用いられています。PCIは、歩行後心拍数から安静時心拍数を引いた値を歩行速度で除することで求められ、値が低い場合はエネルギー消費量が少ない歩行であることを示します。6分間歩行テストでは、一定時間内での歩行距離を評価します。先行研究より、慢性期脳卒中者が地域内歩行者となるためのカットオフ値は213mであると報告されており、活動範囲を想定するうえでも、耐久性についての評価は有用です。

5)Barthel Index(BI)、Functional Independence Measure(FIM)

代表的なADL評価として、BI、FIMが挙げられます。下位項目である歩行を取り上げるとBIでは、平地歩行で評価され、“自立(15点)”、“介助(10点)”、”不可能(0点)”かを評価します。FIMでは、移動手段の1つとして評価され、“完全自立(7点)”、“修正自立(6点)”、”部分介助(5〜2点)”、“全介助(1点)”の計7段階で評価します。どちらの評価も、一定の距離に対する歩行の介助量を評価し点数化しており、治療介入における効果判定の指標として多く用いられています。歩行の実用性という観点では、歩行全体の評価を行なっているのではなく、歩行の自立度と距離を数量的に評価している評価法である、ということを十分に考慮し使用する必要があるでしょう。

6)観察による歩行評価

歩行観察により補助具の使用(杖や歩行器など)や歩行形態(前型、揃え型、後ろ型、2動作、3動作など)などの歩行様式を評価します。また動作分析による保養の評価と合わせ、再現性や滑らかさなど動作の仕上がり度についても評価を行います。

2.評価バッテリーで測れないものは何か

各評価バッテリーを用いて評価を行いますが、実際の様々な場面で歩行がどの程度実用的なのかという視点での評価が最も重要です。例えば、リハビリテーション室内での歩行練習場面において、人が少ない環境下では大きな問題なく歩ける方が、人が多い環境では認知機能や高次脳機能の影響により時折つまずいたり、人とぶつかりそうになったりするなど歩行状態が不安定になることがあります。評価バッテリーを用いた限られた条件下での評価だけでなく、さまざまな条件下での歩行状況について評価を行う必要性があります。内山は条件は付加した際の歩行評価として、①速度の規定・変化させた場合、②リズム・歩幅を規定、③歩行補助具の種類や構造・機能を調整、④並列問題、⑤歩行空間の環境(照度、床面の状態や壁までの距離、対向者の有無)による違いを挙げています。また、必要に応じて平地以外での歩行状況として、①ステップ・跨ぎ動作、②後方・側方移動、③不整地、④段差、⑤段差昇降などの評価も合わせて行う必要性を示しています。

3.評価結果を実用性評価につなげる

活動範囲や環境によって求められる歩行能力は異なるため、ここまであげてきた評価結果を実用性の評価につなげていくためには、対象者の日常生活活動の範囲をより具体的に想定することが重要です。基本的活動のなかでの歩行を考えるのであれば、短距離でも安定性の高い歩行能力を、生活関連活動での歩行を考えるのであれば、効率よく長距離を歩ける耐久性重視の歩行能力を、などここに応じてどの要素に重きを置くのかを考える必要があります。また、対象者の生活をより詳細に想定し、居室内からトイレまでの歩行を評価する。物を運びながらの歩行を評価する。横断ほどがある道や不整地での歩行を評価する。など実際の場面での、あるいはその場面を想定した評価を行い、その動作で歩行に求められる要素について整理していきましょう。

日常生活活動の歩行評価の実施

―入院中(主に回復期病棟)の自立に向けた取り組み

実際にどのような手順で評価を進めていくのか、入院中の病棟内や院内での歩行自立を検討する場合を例に挙げ、いかに評価の手順を示していきます。

STEP 1 基本的な歩行能力を把握する

理学療法場面において基本的な歩行能力の評価を行い、対象者の現状の歩行能力について把握します。歩行評価には10m歩行テストや6分間歩行テスト、TUGなどのテストバッテリーを用いて評価を行います。歩行自立度や歩行形態、歩容の評価も合わせて行いましょう。また、身体機能面に限らず、認知機能や高次脳機能についても歩行に影響はないか、各種評価バッテリーや動作時の影響の様子をみて評価を行っていきましょう。

STEP 2 実際の動作場面での歩行状況を評価する

病棟内や院内での移動では実際にどのような動きが必要となるか、その遂行状況について確認・評価することが重要です。病棟内での移動について自立度を検討する際には、歩行練習の様子のみで自立度を決定するのではなく、病棟内での起居動作や靴の着脱を含めた歩行を行う前の準備、トイレまでの移動、扉の開閉などさまざまな動作の確認を経て検討する必要性があります。

例えば病棟内トイレの移動を検討する際には、対象者が扉の開閉動作を安全に行えるか実際の評価が必要となります。扉は、引き戸か開き戸かの様式によっても求められる立位バランス能力は異なります。図2は引き戸と開き戸を開ける際の動作と支持基底面の変化について示したものです。引き戸を開ける際は、主に左右方向への重心移動が多くなる一方で、開き戸では扉を手前に引く際に、一歩後ろに下がり、扉を閉める際に回転する動作が含まれるなど、前後への重心移動・回転動作が必要となることがわかります。評価を行い、動作が不安定な際は、実査の動作を想定した動きについて練習をする必要があり、やり方や環境設定に工夫が必要です。単に歩くだけでなく、その前後の動作と一連の動きについて評価を行い介入していくことが重要です。

また、歩行の自立度を検討していくうえで、歩行の様子が日中と夜間で差がないかという観点も重要な評価です。特に夜間については、睡眠導入剤などの服薬状況によっても歩行状況が変化することがあるため、病棟スタッフと連携し情報収集を行うことも重要です。

また、活動範囲によっても必要となる評価が異なります。病棟内から院内へ、など活動範囲を拡大する場合には、エレベーターの仕様は問題ないか、自室からリハビリテーション室までの道のりなど迷うことはないか、時間管理が行えるか、他患者への配慮は十分に行えるかなど、さらに評価すべき項目に加え、歩行動作の自立度を検討していく必要があるでしょう。歩行動作について一面的な見方だけでなく、多面的に動作を捉え評価できるように心がけていきましょう。

STEP 3 問題点の整理を行う

現状を評価できたら現在の歩行能力で遂行可能な部分と困難な部分について課題を整理しましょう。前述した実用性を構成するように従い、対象者には歩行のどの要素が足りないのかを考えていきます。機能的予後の予測などから、現状からどの程度まで改善が見込めるのか、理学療法介入で機能向上による改善が可能なのか、または環境設定を行う必要があるのかについても課題を整理し、今後の介入方法について検討しましょう。

おわりに

“日常生活活動をみる”というテーマで歩行評価における視点を概説しました。対象者の活動範囲に求められる歩行能力について、各側面より評価バッテリーを用いて評価を行うこと、実際の動作場面での評価を加え、より具体的に生活のなかにある歩行を捉えられるよう努めて

いくことが重要です。“歩ける”から日常生活活動のなかで“使える歩行”を実現させる理学療法を展開できることを期待します。

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リン子
リン子と言います。時短で働いている2児のアラフォーワーママです🙋‍♀️ 義理両親と完全同居中。同居のこと、育児のことなど気持ちの整理・記録を残そうと思ってブログを始めました。ゆるーく、楽しく(たまに愚痴も笑)書いていこうと思います🙇‍♀️よろしくお願いします🌸 ⚫︎結婚して7年 ⚫︎同居して5年 ⚫︎職業は病院薬剤師 ⚫︎子供は4歳(女)と2歳(男) ⚫︎愛車はセレナ ⚫︎SMAP好き ⚫︎辛い食べ物好き
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