上臀皮神経起因の腰臀部痛に対する理学療法




おはにちわ、理学療法士ののまりこです。

本日は文献紹介を行いたいと思います。
理学療法士の多くが必ず読んだことのある、P Tジャーナルからよう臀部痛に対する理学療法を上臀皮神経起因という視点からの内容です。

Point

  • 上臀皮神経起因の腰臀部痛には、複数の病態が存在する
  • 上臀皮神経起因の腰臀部痛の特徴は、臀部の皮膚操作で痛みが変化する所見を認めることである
  • どの病態で疼痛が生じているのかを評価し、病態に応じた理学療法を行うことが重要である

はじめに

上臀皮神経は、T12-L5神経後枝外側枝が発達し、腸骨稜近傍で胸腰筋膜を貫いて、臀部に分布する皮神経である。複数の枝で構成され、多くは臀部上半分に分布するが、なかには大転子付近にまで枝を伸ばす例も認める。上臀皮神経は腰痛や下肢痛を引き起こす原因であることが知られている。本稿では、上臀皮神経起因の腰臀部痛の病態、評価、理学療法について概説する。

病態

上臀皮神経起因の腰臀部痛は、症状が増悪する動作が前屈、後屈、回旋など、個人によりさまざまであることが特徴である。このように症状を誘発する動作が多様である背景として、筆者は複数の病態が存在すると考えている。実際、上臀皮神経起因の腰臀部痛を引き起こす病態として、1.osteofibrousにおける上臀皮神経起因の絞扼、2.胸腰筋膜貫通部における上臀皮神経の絞扼、3.臀部の皮下組織の滑走性低下に伴う上臀皮神経の牽引、4.脊柱起立筋の筋内圧上昇に伴う上臀皮神経の絞扼、と複数の病態が報告されている。以下、それぞれの病態について詳細を述べる。

Osteofibrous tunnelにおける上臀皮神経の絞扼

上臀皮神経が胸腰筋膜を貫通し、腸骨稜を乗り越えて臀部に分布する際、胸腰筋膜と腸骨稜にて構成されるosteofibrous tunnelを通過する例が一定数存在することが報告されている。Kuniyaらは59体109側を対象とした解剖学的研究で、61側(全体の56%)で少なくとも1本の上臀皮神経がosteofibrous tunnelを通過していたと報告した。さらに61側のうち2側において、osteofibrous tunnel内で上臀皮神経が絞扼されていたと報告した。またMaigneらはブロック治療で改善を認めなかった上臀皮神経起因の腰臀部痛19名に対し、外科的にosteofibrous tunnelの開放を行った。その結果、術中上臀皮神経の絞扼を認めた15名のうち、13名は少なくとも2年間は症状の緩和が持続していたと報告した。以上より、osteofibrous tunnelにおいて上臀皮神経が絞扼されると、腰臀部痛が起こる可能性が推測される。

胸腰筋膜貫通部における上臀皮神経の絞扼

Kuniyaらはosteofibrous tunnelを通過しない上臀皮神経の枝は、腸骨稜の頭側で胸腰筋膜を貫通したと報告した。Morimotoらは胸腰筋膜貫通部の除圧により、上臀皮神経起因の腰臀部痛が消失したと報告した。以上より、胸腰筋膜貫通部において上臀皮神経が絞扼されると、腰臀部痛が起こる可能性が推測される。

臀部の皮下組織の滑走性低下に伴う上臀皮神経の牽引

Kuniyaらはosteofibrous tunnelを通過しない上臀皮神経の枝は、腸骨稜の頭側で胸腰筋膜を貫通したと報告した、Morimotoらは胸腰筋膜貫通部の除圧により、上臀皮神経起因の腰臀部痛を有する患者の臨床的特徴として、臀部の皮膚を腸骨稜に寄せると上臀皮神経の圧痛が軽減し、逆に皮膚を腸骨稜から引き離すと上臀皮神経の圧痛が増強する所見を認めると述べた。このことから神経への牽引は痛みに関与していると考えられる。以上より、変性や瘢痕化による皮下組織の硬化または深部にある大臀筋、中臀筋の筋攣縮により、皮下組織と臀筋膜との間の滑走性が低下した状態で動作を行うと、上臀皮神経が牽引され、痛みが生じる可能性が推測される。

脊柱起立筋の筋内圧上昇に伴う上臀皮神経の絞扼

Tubbsら10体20個を対象とした解剖学的研究で、全例において上臀皮神経は脊柱起立筋を貫通していたと報告した。赤羽根は脊椎圧迫骨折後に続発する脊椎の後彎化により、脊柱起立筋の過伸張に伴う筋内圧上昇が起こり、結果として上臀皮神経が絞扼されることで、腰臀部痛が生じると述べている。実際にこれまで脊椎椎体圧迫骨折後のほかに、姿勢異常障害として前傾姿勢をきたすパーキンソン病患者においても上臀皮神経起因の腰臀部痛が認められることが報告されており、脊柱起立筋の筋内圧上昇に伴う上臀皮神経の絞扼はよう臀部痛を引き起こす可能性が推測される。

評価

上臀皮神経は数mmの細い神経であるため、画像診断が難しい。そのため、これまで臨床症状から上臀皮神経障害の診断が行われてきたが、統一された診断基準はない。Kuniyaらは、①腸骨稜上において、正中線から約7cmまたは上後腸骨棘から約4.5cm外側に離れた位置に非常に強い圧痛点を認める、②圧痛と同時に主訴と同様の腰背部痛や下肢痛が再現される、という2点を満たした場合に上臀皮神経障害と診断した。その他の報告も含め、これまで報告された診断基準の共通する特徴として、上臀皮神経の内側枝がosteofibrous tunnelで絞扼されることにより、疼痛が生じていることを想定している点が挙げられる。筆者は、①上臀皮神経起因の腰臀部痛は複数の病態で生じる、②上臀皮神経起因の腰臀部痛は、内側枝以外の枝でも生じる、③上臀皮神経の走行は個体差が大きく、1つの決まった位置で神経の触診を行うことは困難である、という点を考慮して独自の評価を考案し、病態の鑑別を試みている(図)。

まず、筆者は腸骨稜近傍を頭尾方向に走行する上臀皮神経を直接触診している。Kuniyaらは内側枝が上後腸骨棘から外側に平均で4.5cmの位置にあるが、最も内側にある例では1.3cmの位置に、最も外側にある例では8.2cmの位置にあり、個体差が大きいことが複数報告されているが、筆者はどの報告においても、必ず上後腸骨棘より外側に位置していることが重要であると考えている。そのため、上後腸骨棘から外側に向かって指を動かし、上臀皮神経を確認している。筆者は、上臀皮神経が皮下組織に分布し比較的触れやすい点から、まず腸骨稜から1~2横指尾側部で神経を確認している。その際、神経に対して指を直交するように動かすと確認しやすい。

次に神経に軽く触れた際に強い圧痛が生じる、または主訴と同様の腰臀部痛が再現するのかどうかを確認している。どちらかの所見が確認された際には、その後、林の報告をもとに、臀部の皮膚を腸骨稜に寄せた状態で神経に触れた際に痛みが軽減し、逆に皮膚を腸骨稜から引き離した状態で神経に触れた際に痛みが増強するのかどうかを確認している。これらの所見が確認された際に、筆者は上臀皮神経起因の腰臀部痛の可能性があると考えている。

さらに、神経を筋位に触れていき、腸骨稜の尾側部のほかに、腸骨稜部、腸骨稜の頭側部の計3か所で所見の有無を確認している。最も著明に所見を認めるのが腸骨稜の尾側部である際には、臀部の皮下組織の滑走性低下に伴う上臀皮神経の牽引が、腸骨稜部である際には、osteofibrous tunnelにおける上臀皮神経の絞扼が、腸骨稜より頭側部である際には、胸腰筋膜貫通部における上臀皮神経の絞扼が、それぞれ病態として関与し、腰臀部痛が生じているのではないかと推測できる。

もう1つの病態である脊柱起立筋の筋内圧上昇に伴う上臀皮神経の絞扼については、患者に体感前屈動作を行わせた際に、主訴と同様の腰臀部痛が再現するのかどうかを確認している。動作を行わせる際、脊柱起立筋を触診した状態で行わせ、筋内圧に上昇を認めているかどうかを確認しておくことが重要である。再現痛が得られた場合には、臀部の皮膚を腸骨稜に寄せた状態で動作を行わせると痛みが軽減し、逆に皮膚を腸骨稜から引き離した状態で動作を行わせると痛みが増強するかを確認している。これらの所見が確認された際には、脊柱起立筋の筋内圧上昇に伴い上臀皮神経が絞扼され、腰臀部痛が生じていると推測している。

理学療法

理学療法については、各病態に応じて実施していく(図)。以下、それぞれの病態に応じた理学療法の詳細について述べる。

osteofibrous tunnel、胸腰筋膜貫通部における上臀皮神経の絞扼

これらの病態に対しては、胸腰筋膜の緊張を軽減することが重要である。上臀皮神経が貫通する腸骨稜近傍の胸腰筋膜は、広背筋、内腹斜筋、腹横筋が付着する。これらの筋の筋攣縮の改善および伸張性の改善を図ることが大切である。

皮下組織の滑走性低下に伴う上臀皮神経の牽引

皮下組織と深部にある臀筋筋膜との間に滑走性を改善することが重要である。筆者は大臀筋、中臀筋の筋攣縮の改善を促した後に、深部にある筋の収縮および伸張を利用して皮下組織と臀筋筋膜の滑走性改善を試みている。具体的には、臀部の皮膚をセラピストが固定した状態で、内側の枝に対しては主に大臀筋の、外側の枝に対しては主に中臀筋の自動介助運動とストレッチを繰り返すことで、皮下組織と臀筋筋膜との間の滑走を促している。可能な限り広い範囲で運動を行うことが大切であるため、事前にできるだけ股関節可動域制限を改善しておいたうえで行うとより効果的である。

脊柱起立筋の筋内圧上昇に伴う上臀皮神経の絞扼

脊柱起立筋の筋内圧を下げることが重要である。脊柱起立筋の筋攣縮の改善が基本となるが、その前に脊柱起立筋を背側および腹側から包んでいる胸腰筋膜の緊張を軽減しておくことが大切である。また、前述したように脊柱後彎を有する患者は、脊柱起立筋の過伸張に伴う筋内圧上昇が起こりやすい。椎間関節拘縮の改善、肩甲帯・胸郭部の柔軟性改善、脊柱起立筋や大腿四頭筋の筋力強化を図り、脊柱後彎を改善することも大切である。

おわりに

本稿では、筆者が考える上臀皮神経起因の腰臀部痛の病態、評価、理学療法について概説した。最後に強調しておきたいことは、あくまで上臀皮神経は多くの腰臀部痛を引き起こす原因の1つであるという点である。腰臀部痛に対する理学療法を行う際には、痛みを引き起こしている原因組織が何であるかを、しっかり鑑別して進めることが重要である。

上臀皮神経起因の腰臀部痛については、依然として病態が不明確であり、病態の可視化は急務である。これまで画像診断が難しいとされた上臀皮神経について、近年超音波診断装置にて確認できると報告が複数ある。今後は超音波診断装置を用いて、病態の検証を行っていくことが重要であると考える。

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リン子
リン子と言います。時短で働いている2児のアラフォーワーママです🙋‍♀️ 義理両親と完全同居中。同居のこと、育児のことなど気持ちの整理・記録を残そうと思ってブログを始めました。ゆるーく、楽しく(たまに愚痴も笑)書いていこうと思います🙇‍♀️よろしくお願いします🌸 ⚫︎結婚して7年 ⚫︎同居して5年 ⚫︎職業は病院薬剤師 ⚫︎子供は4歳(女)と2歳(男) ⚫︎愛車はセレナ ⚫︎SMAP好き ⚫︎辛い食べ物好き
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